Prom Town Story

おなかグーグース背景世界の物語

「げっそり魔法、ぽっちゃり魔法」

-1-

ある晴れた日 クインシー坊やとカーズは いつもの散歩道を歩いていました

すると カーズが突然 遠くに揺れる人影を指差して 震えながら叫びました

「あっ、あれ!…ゲッソリーニだ!」

クインシー坊やは カーズの大きな声を初めて聞いたので ちょっとびっくりしました

カーズが指差した先には 痩せこけた背の高い老人が立っています

 

「誰?あの人…。すごく痩せてるね」

「ゲッソリーニは、この街に昔から住んでいる神様で、触った人に罰を与えるんだ」

「ばつ?どんなばつなの?」

「…だんだん、体が痩せ細っちゃうんだ!」

 

恐怖に頭を抱えるカーズの横で クインシー坊やはポカーンとしています

クインシー坊やは 自分の体がスマートになっているところを想像していたのです

 

「クインシー…?」

 

次の瞬間 クインシー坊やは ゲッソリーニのすぐ近くへと駆け出しました

ゲッソリーニは 珍しく小さな子供に呼び止められました

まんまるい子供は 目を輝かせて こちらを見上げています

 

「ぼくも痩せる~!」

「なんだい、この、まんまるい子供は…」

「痩せたらカッコいい?」

「お前も私みたいになりたいのかい?」

「ううん、全然ちがーう」

 

ゲッソリーニは 自分の痩せこけた容姿を馬鹿にされたような気がして

目の前の まんまるい子供に 罰を与えようと考えました

 

「お前も痩せてしまえ!」

「うわわっ!」

 

クインシー坊やは ゲッソリーニの手から放たれた謎の光を浴びてしまいました

とてもびっくりしたクインシー坊やは その場でよろよろと倒れてしまいました

カーズが急いで駆け寄ると ゲッソリーニの不気味な声が辺りに響き渡ります

「これで明日の朝には、お前もゲッソリーニ…」

 

-2-

カーズは クインシー坊やを背負って ハレー先生の居る音楽教室に駆け込みました

ハレー先生は うなされているクインシー坊やを見て すぐにピアノの練習を中断しました

 

「どうしよう、このままじゃ、クインシー坊やが、ゲッソリーニになっちゃう…」

 

涙目になっているカーズから話を聞いたハレー先生は 出掛ける準備を始めました

クインシー坊やを背負って外に出たハレー先生は カーズに向かってうなづきます

 

「私に任せなさい」


-3-

ハレー先生は クインシー坊やを背負って長い山道を歩いていました

日が暮れる前に目的地へ辿り着かなければ きっと迷ってしまいます

 

「クインシー、もう少しの辛抱だよ」

 

ハレー先生は 自分の足が段々と重たくなっていることに気付きましたが

それでも この山道は越えなければなりませんでした

心配しているカーズの事も思い浮かべながら ひたすら前へ前へ歩いてると

霞んだ視界の中に 高い高い塔が現れました

 

-4-

「ごめんください。インシークアイの、ハレー・バッカスです」

大きな扉の前で ハレー先生は息を切らしながら名乗りました

しばらくすると扉が開いて 輝く大広間の真ん中に まんまるい神様が現れました

 

「ようこそ。私が、ポッチャリーンだよ。長い道のりだったでしょう、さあどうぞ」

まんまるい神様は 朗らかな表情でハレー先生とクインシー坊やを迎え入れました

ハレー先生は クインシー坊やを石で造られた台の上に寝かせました

 

「この子が、ゲッソリーニに呪いを掛けられてしまった、クインシー坊やなんです」

「まあ、これは大変だわ…。ちょっと待っててね」

 

ポッチャリーンは 螺旋階段の方へ戻って誰かの名前を呼んでいます

「プリン?プリンは居るかしら?」

 

大きな石像の影から クインシー坊やと同い年くらいの男の子が現れました

男の子は 焦る様子もなく 横たわるクインシー坊やの元へ歩いてきました

 

「君が、プリンくん?」

「はい、そうです。…この子が、インシークアイのクインシー坊やですね」

プリンくんは右手の上に煌々と光る炎を浮かべました

光の塊に包まれていくクインシー坊やを ハレー先生は恐る恐る見ていましたが

クインシー坊やが目を覚ますと同時に 真っ白な炎は小さくなって消えました

クインシー坊やは 起き上がってハレー先生を見付けます

 

「あっ、ハレー先生。ここどこ?なんだか、くらくらする…」

安心したハレー先生は 思わずクインシー坊やを抱きしめました

 

「…今回は上手くできた気がするけど」

「上出来よ、プリン!げっそり魔法を丁寧に打ち消す事ができたわね」

クインシー坊やは 目の前で知らない人が話しているので 少し戸惑っています

 

「クインシー。この方々は、ぽっちゃり魔法でプロムタウンを守ってくれているんだよ」

「そうなの?じゃあ、インシークアイも守ってくれてるの?」

「うんうん。別原も、三段原も…」

「ぼくの家も?」

 

-5-

その日 クインシー坊やとハレー先生は ポッチャリーンの塔の7階に泊めてもらいました

窓から外を見ると これまで歩いてきた山道の もっと向こうまで見渡せるほどの絶景です

晩ごはんの時間には ポッチャリーンとプリンくんが手料理を振舞ってくれました

クインシー坊やは 新しくできた友達とたくさん話したいと思っていましたが

プリンくんは 晩ごはんを一緒に食べたあと すぐに自分の部屋に戻ってしまいました

クインシー坊やとハレー先生は 夢中でごちそうを食べたので すぐに眠たくなりました

 

-6-

翌日 クインシー坊やは手を振って ハレー先生は頭を下げて

インシークアイにある自分たちの家を目指して帰って行きました

ポッチャリーンとプリンくんは 高い塔のバルコニーから二人の帰路を見守っています

プリンくんは 昨夜 一人で考えていたことを ポッチャリーンに話そうとしました

 

「母さん、あの白いしっぽが生えてた子って…」

「ええ、まさかインシークアイに居たなんてね」

 

ポッチャリーンは クインシー坊やが帰り際に見せた笑顔を思い出して 微笑んでいました

 

「クインシー・ボー…、また会えるかしらね」

 

 

(つづく)

 

 

----------